Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
「なにっ! いつ、どこで」
「大和の国柳生の庄」
「大和の」
「綿屋という旅籠の風呂の中で」
「や、あの時?」
「どっちも、身に寸鉄も帯びていない風呂の中であったが、眼をもって、この男、斬れるかどうかを自分は心のうちで計っていた。そして、眼で斬った、見事に斬れたと思った。しかし、そちらの体には何の形も現さないから、気づきもせずにおったろうが、おん身が、剣で世に立つ者と傲語するならば、余人のまえでいうなら知らぬこと、この武蔵のまえでいうのは笑止だ」
「なにをいうかと思えば、愚にもつかぬ吐ざき言。だが、少しおもしろい、その独りよがりを醒ましてやろう。来いっ。彼方へ立とう」
「して伝七郎、道具は、木太刀か、真剣か」
「木太刀も持たずに参って何をいう。真剣は覚悟のうえで来たのと違うか」
「相手が木太刀を望みとあれば、相手の木太刀を奪って打つ」
「広言、やめろッ」
「では」
「おっ」
――伝七郎の踵は、雪の上に黒い斜線を一間半も描いて、さっと武蔵の通る空間を与えた。――しかし武蔵は、縁の上を横へ二、三間つつつつと歩いてから雪の中へ降りていた。
ふたりは、御堂の縁からそう何十間も先までは歩いて行かなかった。