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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
武蔵は、なにかはっと思い当ったように、足を早め出して、山伝いに、志賀山街道を横切り、どこまでも山の腹を、横へ横へと、急いで行った。
――一方。
慌て者の松明は、一目散に、銀閣寺のわきまで駈け降りて来た。
そして、片手を口にかざして、
「オオイ、内蔵殿、内蔵殿」
と、同僚の名を呼ばわっていると、その同僚とはちがうが、やはり烏丸家の内に、ここ永らく泊っている城太郎少年が、
「なんだアい――小父さん――」
と、二町も先の西方寺門前あたりから遠く返辞が聞えてくる。
「城太郎かあ――」
「そうだアい」
「はやく来ウいっ――」
すると、また遠くから、
「行かれないよーっ……。お通さんが、ここまでやっと来たけれど、もう歩けないッて、ここへ仆れちまったから、行かれないよーっ」
烏丸家の奉公人は、
(ちぇっ……)
舌打ちを洩らしたが、前よりも高い声を張りあげて、
「はやく来ないと、武蔵殿がもう遠くへ去ってしまうぞっ。――早く来いっ、たった今そこで、武蔵殿をわしが見つけた!」
「…………」
すると今度は、返辞がして来ないのである。
――と思ううちに、彼方から二つの人影が、縒れ合うように一つになって急いで来る。