Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
あなたはわたくしを、不幸にしたくないからと仰っしゃいましたが、わたくしは決して、不幸に敗れて死ぬのではございません。――わたくしを見る世の中の人達が、皆わたくしを不幸だといっても、わたくし自身は、ちっとも、そんな不幸ではないのでございます――むしろ、ああなんといっていいだろう、死の夜明けが、楽しみで待ち遠で、朝の小鳥の音の中に死んで行く身が――花嫁のようにいそいそ待たれてなりません」
長くものをいうと、息が喘れるのであろう。彼女は自分の胸を抱きしめて、そして、夢みるように幸福な眼をあげた。
残んの月はまだ白々としていて少し樹々に霧は立ち初めたが、夜明けにはまだ間があった。
――すると。
ふと彼女の眸を上げた崖の上の方で、
「キャーッ!」
突然、樹々の眠りをさまして翔ける怪鳥のように、一声、女の鋭い悲鳴がつんざいた。
たしかに女の絶叫だった。
さっき城太郎が、その崖の道を上へ登って行ったはずではあるが、その城太郎の声では決してなかった。
十一
凡事とも思われない。
誰の叫びか。また、何事が起ったのか。
われを呼び醒まされたように、お通は眼をやって、霧のかかっている峰の頂を仰いでいたが、その機に武蔵は、つと彼女の側を離れ、