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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
「茶に知るの、知らぬのという、智恵がましい賢らごとはないものぞよ。武骨者なら武骨者らしゅう飲んだがよいに」
「そうですか」
「作法が茶事ではない、作法は心がまえ。――あなたのなさる剣もそうではありませぬか」
「そうです」
「心がまえに、肩を凝らしては、せっかくの茶味が損じまする。剣ならば、体ばかり固うなって、心と刀の円通というものを失うでござりましょうが」
「はい」
武蔵は、思わず頭を下げて、次のことばに耳をすましていたが、ホ、ホ、ホ、ホ、と妙秀はその後を笑い消して、
「わたくしに、剣のことなどは、何もわかりませぬがの……」
と、いった。
「いただきます」
武蔵は、膝が痛いので、畏まっていた膝をあぐらに組み直した。そして、飯茶碗から湯でも飲むようにがぶと飲んで下へ置いた。
(苦い)
と思った。
それだけのことで、美味いなどとは世辞にもいえない気がした。
「もう一ぷく、いかがでございますか」
「たくさんです」
どこが美味いのか、なんでこんな物を深刻らしく、味の侘の作法のというのか。
武蔵には、解せなかった。しかし彼は、最前からこの母子に持った疑問と共に、一概に軽蔑し去る気にもなれない。