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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
こう連中がいきまいて、袋だたきの私刑を宣言すると、又八は、刀の柄で身を護るように立って、
「なんだ? おれを撲る? 面白い、撲ってみろ。――貴様達は、おれを誰だと思っているか」
「乞食よりも意気地がなくて、盗っ人よりも太え芥溜牢人と思っているが、それがどうした」
「いったな」
青じろい眉間をよせて、自分の周りを睨めまわしながら又八は、
「おれの名を聞いて驚くな」
「誰が驚くものか」
「佐々木小次郎とはおれのことだぞ。伊藤一刀斎のおとうと弟子、鐘巻流のつかい手、小次郎を知らねえか」
「笑わかしやあがる。きいた風な文句はいいから、金を出せ、飲んだ金を」
一人が、手を出して責めると、又八は、それに返すことばの代りに、
「印籠で足らなければ、これもくれてやるっ」
抜き打ちに、刀を払って、その男の手首を斬って落した。きゃっ――と大げさな悲鳴をあげたので、まさかと多寡をくくっていた居酒屋の相客たちは、自分の血がこぼれたような錯覚に、尻と頭をぶつけ合って、
「抜いたっ」
と、われがちに逃げだした。
又八は白刃をふりかぶってその手の下に、颯と急に冴えたような眼を光らし、
「今、なんといった。