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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
まあ、見てくれい」
背に負っている武者修行包みの結び目を解きかけると、炉の向う側にいる三名の野武士たちは、杯を忘れて皆、武蔵の手を凝視していた。
武蔵は、包みを膝にのせた。それは雁皮の紙縒に渋汁を引いた一種の糸で、袋のように編んだ物である。武者修行して歩く者は皆、その袋へ、大事な物を押し籠めて負っているが、武蔵の包みの中には、今彼のいった木彫の観音と、一枚の肌着と貧しい文房具しかはいっていなかった。
編袋の一方を持って、武蔵はそれを振り動かした。すると、中からずしりと、土間へ転がった物がある。
「……やっ?」
これは、茶屋のおやじとまた、炉の向う側にいた三名の口から出た声だった。――武蔵は自分の足元へ眼を落したまま、ただ唖然たる顔でしかない。
金の包みである。
慶長小判や銀や金色のかねが、そこらまで散らばった。
(――誰の金?)
と、武蔵は思った。
四人も、そう疑ぐっているらしく、息をのんで、土間の金へ、眼を奪われていた。
武蔵は、もう一度武者修行袋を振ってみた。すると、金の上へ、さらにまた、一通の書面がこぼれた。
七
怪しみながら披いてみると、それは石母田外記の置手紙であった。