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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
「うるさいな、粟を出しておくれよ、はやく、粟をおくれよ」
「アワといわないで、アカといってみろ」
「アカ」
「んべ! ……だ」
納所坊は、調子に乗って揶揄いながら、眼の玉を剥いて、ぬっと顔を突き出した。
ぐしゃっと、濡れ雑巾のようなものが、その顔へ貼りついた。納所坊は、きゃっと悲鳴をあげて青ざめた。彼の大嫌いな大きなイボ蟇であった。
「このお玉杓子め」
納所坊はおどり出して、伊織の首根ッこをつかまえた。そこへ奥に泊っている檀家の長岡佐渡様がお召しになっている――というべつな寺僧の迎えであった。
「なにか、粗相でもあったのか」
と、住持までが、案じ顔してそこへ来たが、いえいえただ佐渡様が徒然に呼んでこいと仰っしゃるまでで――と聞いて、
「それならよいが」
と住持はほっとしたが、なお、心配は去らないとみえて、伊織の手を引っぱって、自身、佐渡の前へ連れて来た。
書院の隣室には、もう夜の具が展べてある。老体の佐渡は、横になりたかった所だが、子どもが好きとみえて、伊織が、ちょこなんと住職のそばに坐ったのをみると、
「幾歳じゃな」
と、訊ねた。
「十三。ことしから、十三になりました」