Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens

Aozora Bunko

「はい」

と気のない答えよう。

「――なぜこの刀は、研げないのでござろうか。研いでも効いのない鈍刀というわけであろうか」

「うんにゃ」

と、耕介は首をふって、

「刀は、持主のそこもと様が、誰よりようご存じじゃろが、肥前物のよい刀でおざる。――ですがの、実をいえば、斬れるようにというお望みが気にくわんでな」

「ほ。……なぜで」

「誰も彼も、およそ刀を持って来る者が、一様にまずいう注文が――斬れるように――じゃ。斬れさえすればいいものと思うておる。それが気に喰わぬ」

「でも、刀を研ぎによこすからには」

いいかける武蔵のことばを、耕介は、手で抑えるような恰好をして、

「まあ、待たっしゃい。そこのところを説くと話は長くなる。わしの家を出て、門の看板を読み直してもらいたい」

「御たましい研所――としてござった。他にまだ読みようがござりますか」

「さ。そこでござる。わしは刀を研ぐとは看板に出しておらぬ。お侍方のたましいを研ぐものなりと――人は知らず――わしの習うた刀研の宗家では教えられたのじゃ」

「なるほど」

「その教えを奉じますゆえ、ただ斬れろ斬れろと、人間を斬りさえすれば偉いように思うているお侍の刀などは――この耕介には研げんというのじゃ」