Japanische Klassiker mit Furigana
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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
Lesen Sie 福翁自伝 (ふくおうじでん) von 福沢 諭吉 (ふくざわゆきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.912 Zeichen · 402 Bildschirme
日本国中唯慶應義塾のみ
明治元年の五月、上野に大戦争が始まって、その前後は江戸市中の芝居も寄席も見世物も料理茶屋も皆休んで仕舞て、八百八町は真の闇、何が何やら分らない程の混乱なれども、私はその戦争の日も塾の課業を罷めない。上野ではどん/″\鉄砲を打て居る、けれども上野と新銭座とは二里も離れて居て、鉄砲玉の飛で来る気遣はないと云うので、丁度あの時私は英書で経済の講釈をして居ました。大分騒々敷い容子だが烟でも見えるかと云うので、生徒等は面白がって梯子に登て屋根の上から見物する。何でも昼から暮過ぎまでの戦争でしたが、此方に関係がなければ怖い事もない。
日本国中唯慶應義塾のみ此方がこの通りに落付払て居れば、世の中は広いもので又妙なもので、兵馬騒乱の中にも西洋の事を知りたいと云う気風は何処かに流行して、上野の騒動が済むと奥州の戦争と為り、その最中にも生徒は続々入学して来て、塾はます/\盛になりました。顧みて世間を見れば、徳川の学校は勿論潰れて仕舞い、その教師さえも行衛が分らぬ位、況して維新政府は学校どころの場合でない、日本国中苟も書を読で居る処は唯慶應義塾ばかりと云う有様で、その時に私が塾の者に語たことがある。