Japanische Klassiker mit Furigana
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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
Lesen Sie 福翁自伝 (ふくおうじでん) von 福沢 諭吉 (ふくざわゆきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.912 Zeichen · 402 Bildschirme
幕府にも感服せず
幕府にも感服せず藩に対しての身の成行、心の置どころは右の通りで、扨江戸に来て居る中に幕府に雇われて、後にはいよ/\幕府の家来になって仕舞えと云うので、高百五十俵、正味百俵ばかりの米を貰て一寸と旗本のような者になって居たことがある。けれども是れ亦、藩に居るときと同様、幕臣になって功名手柄をしようと云うような野心はないから、随て自分の身分が何であろうとも気に留めたことがない。一寸とした事だが可笑しい話があるその次第は、江戸で御家人の事を旦那と云い、旗本の事を殿様と云うのが一般の慣例である、所が私が旗本になったけれども、固より自分で殿様なんて馬鹿気たことを考える訳けもなければ、家内の者もその通りで、平生と少しも変た事はない。爾うすると或日知己の幕人(たしか福地源一郎であったかと覚ゆ)が玄関に来て殿様はお内か。「イーエそんな者は居ません。「お内においでなさらぬか、殿様は御不在か。「そんな人は居ませんと、取次の下女と頻に問答して居る様子、狭い家だからスグ私が聞付けて、玄関に出てその客を座敷に通したことがあるが、成るほど殿様と云て下女に分る訳けはない、私の家の中で云う者もなければ聞た者もない言葉だから。