Japanische Klassiker mit Furigana
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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
Lesen Sie 福翁自伝 (ふくおうじでん) von 福沢 諭吉 (ふくざわゆきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 209.912 Zeichen · 402 Bildschirme
些細な事のようだが、当時最も癪に障るのは旅行の道中で、幕人の威張り方と云うものは迚も今時の人に想像は出来ない。私などは譜代大名の家来だから丸で人種違いの蛆虫同様、幕府の役人は勿論、凡そ葵の紋所の付て居る御三家と云い、夫れから徳川親藩の越前家と云うような大名か又はその家来が道中をして居る処に打付かろうものならソリャ堪らない。寒中朝寒い時に宿屋を出て、河を渡ろうと思て寒風の吹く処に立て一時間も船の来るのを待て居る、ヤッと船が着て、やれ嬉しやこの船に乗ろうと云う時に、不意と後ろから葵の紋の侍が来るとその者が先きへその船に乗て仕舞う、又アト一時間も待たなければならぬ。駕籠を舁ぐ人足でも無人のときには吾々は問屋場に行て頼んでヤッと出来た処に、アトから例の葵の紋が来ると、出来たその人足を横合から取られて仕舞う。如何なお心善でも腹を立てずには居られない。凡そ幕府の圧制殻威張りは際限のない事ながら、私共が若い時に直接に侮辱軽蔑を受けたのは、道中の一事でも血気の熱心は自から禁ずることが出来ず、前後左右に深い考えもなく、唯癇癪の余りに、こんな悪政府は世界中にあるまいと腹の底から観念して居た。