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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
一 淡島氏の祖――馬喰町の軽焼屋
椿岳の画は今の展覧会の絵具の分量を競争するようにゴテゴテ盛上げた画とは本質的に大に違っておる。大抵は悪紙に描きなぐった泥画であるゆえ、田舎のお大尽や成金やお大名の座敷の床の間を飾るには不向きであるが、悪紙悪墨の中に燦めく奔放無礙の稀有の健腕が金屏風や錦襴表装のピカピカ光った画を睥睨威圧するは、丁度墨染の麻の衣の禅匠が役者のような緋の衣の坊さんを大喝して三十棒を啗わすようなものである。
この椿岳は如何なる人物であった乎。椿岳を語る前に先ずこの不思議な人物を出した淡島氏の家系に遡って一家の来歴を語るは、江戸の文化の断片として最も興味に富んでおる。
一 淡島氏の祖――馬喰町の軽焼屋
椿岳及び寒月が淡島と名乗るは維新の新政に方って町人もまた苗字を戸籍に登録した時、屋号の淡島屋が世間に通りがイイというので淡島と改称したので、本姓は服部であった。かつ椿岳は維新の時、事実上淡島屋から別戸して小林城三と名乗っていたから、本当は淡島椿岳でなくて小林椿岳であるはずだが、世間は前身の淡島屋を能く知ってるので淡島椿岳と呼び、椿岳自身もまた淡島と名乗っていた。が、実は小林であったか、淡島であったか、ハッキリしない処が椿岳らしくてイイ。