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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
椿岳の泥画
この寛闊な気象は富有な旦那の時代が去って浅草生活をするようになってからも失せないで、画はやはり風流として楽んでいた、画を売って糊口する考は少しもなかった。椿岳の個性を発揮した泥画の如きは売るための画としてはとても考え及ばないものである。
椿岳の泥画
椿岳の泥画というは絵馬や一文人形を彩色するに用ゆる下等絵具の紅殻、黄土、丹、群青、胡粉、緑青等に少量の墨を交ぜて描いた画である。そればかりでなく泥面子や古煉瓦の破片を砕いて溶かして絵具とし、枯木の枝を折って筆とした事もあった。その上に琉球唐紙のような下等の紙を用い、興に乗ずれば塵紙にでも浅草紙にでも反古の裏にでも竹の皮にでも折の蓋にでも何にでも描いた。泥絵具は絹や鳥の子にはかえって調和しないで、悪紙粗材の方がかえって泥絵具の妙味を発揮した。
この泥画について一笑話がある。ツイ二十年ほど前まで日本橋の海運橋の袂に楢屋という老舗の紙屋があった。この楢屋の主人はその頃マダ若かったが、先代からの江戸の通人で、文人墨客と広く交際していた。或時椿岳がフラリと来て、主人に向っていうには、俺の処へ画を頼みに来るものも多いが、紙ばっかりでトンと絹を持って来ない、どうだい、一つ絹に描かしてくれないかと。