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にっき
日記
宮本 百合子
14 一九二八年(昭和三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,758 字 · 118 页
七月十日
我等を無視して、すっかり我等に芝居を見せているところ面白し。エンジェネールの妻、明日かえる由、あとでどうなるか。
七月十日(火曜)
今日は朝食後散歩はやめだ。朝から歩く。つかれる。何も出来ない。それより обед〔昼食〕まで居て、обед 後自分は歩き、Yは眠るなら眠り、茶の後は二人で歩く。そういう日課にきめた。
夜食後、アレクセイ・トルストイのところへ出かける。遠いかと思って居たら近い。モスコウスカヤ〔街路名〕の角の家の二階。出入口は一向田舎らしくもないクワルティーラだ。家内は奇麗で、書斎にはレオナルド・ダ・ヴィンチの弟子が描いたのにレオナルドがなおしてやったという絵と、ドイツの十七世紀の絵と、〔四字分空白〕だろうという絵と、ピーター大帝の生面(此は非常に埃及の角力取に似た顔だ。円い、精力と意志だけの顔)プーシュキンの寂しい悲しげに唇を曲げた死面。支那の陶に座ってタイプライターで仕事をして居る。現代のフランスの絵はキライナ由。そういう点自分には不思議な気がした。此那単調な圏境でこんな古いものにとりまかれて、いくら妻君がきれいでフランスのお白粉をつけて居ても、自分だったらダルで、よい小説など書けそうにない。