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にっき

日記

宮本 百合子

14 一九二八年(昭和三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,758 字 · 118 页

青空文庫

二月二日

きのう一人で散歩したとき居た男が、やはりトウェルスカヤ〔街路名、現在のゴーリキー通り〕の先のところで、松の枝を売って居た。

入浴。

〔欄外に〕

○午後からスティーム室に来ず。北側に居る秋田さん、凋びたレモンのようになって懐炉を腰に入れた。

二月二日(木曜)寒

昨夜、Yフロ場で眼鏡をケースごと落したら、ガラスがはずれた。今朝二人で出かけ、或小さい時計屋へ入って、Yの時計のごみをとらせ、そのガラス修繕さす。トンドントンと下りる、半地下室。左がごみごみした時計屋、中央が洋傘のはりかえや、右が、タイプライター修繕、一軒の家で、三つの店がはってあり、修繕パラソルのところには女が居て日本で数年前流行った、ひどく柄の長いパラソル、而も紫のが立ててあった。その男、猶太人。ゴスイズ〔国立図書出版所の略〕で、ブハーリンの唯物史観を買う。いかにもロシア的チェスがあった。

○イフゲーニア・ミハイロブナ、Y、いやがって、いやがって閉口、双方がいやなのだろう。稽古がすんで後愉快であったためしなし。Yのいう程きらわずともいいと思う。

〔欄外に〕

○大道のリンゴや「もう二度見た」と云う、きのう(一昨日その前日)Y、価をきいただけでかわなかったから。