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にっき
日記
宮本 百合子
14 一九二八年(昭和三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,758 字 · 118 页
八月二十三日
その代りこの影をつかって居る。
○貴族の女中にからかうところ。青年達の集り(真直な黄色い髪が額に眉の上まで下って居る男メガネをかけたロシア風)と、貴族と将軍が酒をのみ、撞球をする二重舞台。貴族は娘を売ろうとする。
〔欄外に〕
若い主人公をした男はよくなかった。若い貴族をした男は汐見式の、レビゾールのフリスターコフをやった男、
八月二十三日(木曜)
エルミタージュへ行く。バン・ダイク、ルーベンス、ベラスケス。
この前鳴海さんと三人で見たときとは又まるで違うよさを発見し愉快であった。ルーベンスの肖像、男の顔、女の顔(女の目)女の立像、バン・ダイクの母と小さい娘との肖像、忘れられぬよさなり。
レムブラントの部へ来て、三分の一見たら時間になってしまった。が、基督を十字架からおろすところの画、見て居るうちに自分涙が出た。レムブラントという男は何と人生の深い心持を知って居るのか! ここではキリストは従来の神の子ではない。可哀そうな死んだ一人の人間だ。それを抱きかかえて十字架からおろして居る老いた男の溢れる愛、悲しみ、理解、レムブラントは生きて居る人間を描いた。そして死んだ者の残した感銘のつよさを示して居る。