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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

二月二十八日

和辻氏の「日本古代文化」と大日本歴史集成を並べよむと、所謂歴史が如何に解剖と人間的洞察、人性を見通さない記述であるかが驚かれる。

歴史は只事件の発生と経過と結果の報告にすぎないものとして扱われて居る。和辻氏のをよむと、日本の歴史は、活々とし愛すべき人間の足跡と成る、驚ろくべき違い! 世界中の文化は斯う云う態度で扱わるべきものだろう。歴史に対する正当な態度を明示された大いなる賜物。

石原さんの音楽会、□村禎子氏のピアノ。

ビクターでエルマンのアベマリアをきいて驚いた。心がぞっとするほど音の裡に強い肉感性――生――があった。暖く震えながら息をついてマリア讚歌を捧げて居るようななまなましさを感じた。

寺田初代氏に会う、宮部氏の嫁の姉上、面白き人。

二月二十八日(月曜)

夜、けいおうの一生徒来る。Aに家庭のいざこざを相談すると云う。実は成績の悪いのを苦にして、それで同情を求めようというのらしい。分らないが。若しそうだとすれば、人間に其那窮策を思いつかせる学校制度は恐るべきものである。学校は人間を考えない。一面から云えば、入学試験の難しいのが程度の高いことだと思って誇って居る。