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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

一月九日

一月十日

一月九日(日曜)晴

松野喜内氏来る。ひどく小心な、神経質な人だ。然し段々話して居るうちに、彼の真剣な人であることが分った。真剣なところのある人間は頼しい。石井孫一などは、まるで仕事が異って居ても尚人としての面白さがある。其が大切なのだ。

英男が、夕方から一寸来、例によって早口で、沢山のことを喋って行った。あの時分の子供の頭は面白い、複雑さと単純さがひどくごちゃまぜになって居る。浜名湖の常盤館で出した菓子は飾が気取って居て奇麗だが真個に食べられるのは、たった羊かん一切なのさと云うようなことを云うかと思うと急に、光線は硝子を透す時屈曲するって云うやね、だけれど、姉ちゃん変じゃあない? と云って、厚い硝子と薄い硝子の場合はどうだなどと云い出す。面白い。生毛が小さい小さい柔かく、もみ上げから衿元、頬にかけてうずまきに生えて居る。

一月十日(月曜)晴

昨夜どうかして眠られず。不思議なこと、私共のような結婚をしたものは、友達に二人の仲のよいことを賞められ祝されると、一層新たな愛や亢奮を互に感じるものだと見える。

自分は、まだ結婚しない時代に戻ったような、胸の緊められるようないとしさを感じた。