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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

〔一月予記表〕

一月一日

一月二日

〔一月予記表〕「黄銅時代」第一完成

一月一日(土曜)晴 寒

昨日夕方の六時頃漸々自分は此丈は間違わずにやってしまい度いと思って居た、「黄銅時代」の第一部の初稿を終った。

百六十枚ほどに成り、厚くどっしりと机にのって居るのを見ると、心がよろこびで跳った。よい来年の首途。其から林町へお年越しに行き、夕飯を御馳走になってから十二時過に帰った。

昨日の朝から降り積った雪が、夜が更けるにつれて凍り、如何にも江戸の情調をしのばせる除夜であった。家に帰っても、自分は亢奮して眠れなかった。疲れすぎたのか、よろこびで目がさえてしまったのか、眠ろう眠ろうとし乍ら、一睡もせずに床を離れた。よい元日! 自分達が一緒の家で二人限りで迎えた、最初の元日である。屋根屋根の雪を輝やかせ乍ら、次第に輝きの面積を拡げて漂って来る朝の日光は非常に美しかった。Aは、夜になってから、タイプライターを打ち、自分は不眠の疲れで、まとまったことは出来なかった。

一月二日(日曜)寒

何故日本人は正月を斯う幾日も遊び暮すのだろうか。外界の遊楽気分が自分迄を誘惑する。二人で丈居れば時を忘れ、行事を忘れて仕事に熱中する。