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にっき
日記
宮本 百合子
07 一九二一年(大正十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页
十二月十日
十二月十一日
私はAによって材料を与えられ、一人だけの世界を持って居る。其処に性格として非常の差があるのではないか。
夜、外を通る人の足音、下駄の音、堅く淋しくなった。
十二月十日(土曜)雨
夕方、ひどい雨の中を、とりに、かにを持って院長の処へやる。我々は新年の賀状を書く。
昨夜、Aの話したことは深く自分の心に遺った。
私が林町へ行くのを歓ばない理由を、私は、マミに対する彼の反感からだと思って居た。然しそれのみではなく、自分が林町の家族に持って居る暖い心を、他家のものだと云う先入意識によって認められず、愛を拒絶され、自分も我うちと思って居るのに行けない処へ私のみが、どうして楽しく自由に出入りされるかと云う心持だったのだ。珍しく、しんみりと話し、自分は涙の出るのを感じた。
社会の習慣と云うものは恐ろしい。仮令彼が、自分の家より林町を愛して居たとしても、荒木と云う姓にこだわって、その心のみ真個に受け入れられないのだ。
十二月十一日(日曜)晴
断水と云うので、大東京中、大騒ぎであるらしい。幸、崖下の井戸を使えるので仕合わせである。
午前中、二人ですっかり部屋の模様がえをし、工合よくなる。