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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

一月二十九日

そうだった。自分は、何とも云えない感謝や、一種の自身に対するみじめさやを感じた。

この間、林町へ行った時、経済上の話が出たので、きっと家賃丈でもと思って下さったのだろう。親の思い遣りに心を打たれた。

其那に、金が少ないと云うことは母上たちにひどいことに思われるのだろうか、毎日が生活出来て、ひどくこまらなければ、自分は、まるで其那ことを忘れて居る。困りかたが忘れて居る程度なのだ。親というものは、実に、深い絶間ない愛を持って居るものだ。

倉田氏の「布施太子の入山」を読む。動かされる。然し、太子が妃を自ら波羅門にくれてやる心持は、そして妃が、貴方のためにと云って行く心持は、自分の頭では承認される。然し、胸が驚く。心の何処かが、真個に? とつぶやく。真個に? 真個に其が唯一の道で愛だったのか?

第一、私には、布施が子供や妻を伴って宮を出たと云うことが、彼の叡智から考えて不思議に思われる。もっとゆっくり読なおそう。

一月二十九日(土曜)

「黄銅時代」(五)終り

『時事』の宇野氏の相馬泰三氏に対する評は、今日最も感激される。ああ云う批評をされて、相馬氏は、全くどんな心持がするだろう、自分は宇野氏の心を見られたと同時に自分迄はげまされよろこばしい心持がした。