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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

二月三日

細田民樹氏の冷酷と無情、『新潮』をよむ。

自分の心に対して、ああ云うものは一つの驚きである。

ああ云う人間がある。――それはそうだろう、それはあるに異いない。けれども、ああ云う心持で其人なり、その事件なりを見られるのかと思うと自分は寒いような心持がする。

ちっとも光りのない稟性。

芸術が、若し字をスラスラと並べ、事を写す丈なら、写真以下のものだ。

二月三日(木曜)

朝起きて見ると、チラチラ雪が降り始めて居る。Aの予言が当った。

『黄銅時代』六を書き、ガルスオーシーのタッターデマリオンを少しよむ。

夜、あまり頭よろしからず。『日日』や、五中の返事を書く。

岡本かの子氏の詩を『時事』で見る。あの女性のよいところが出て居ると思う。

今日、三宅恒方氏死去。

自分は何とも云えない感に打たれた。たった四十二で、彼那に才気に満ち、健康そうだった人が死ぬのか、

安子夫人のことを思う。自分は『婦人公論』などに見えるいやに納った態度に対する反感を忘れて同情した。伯父上が、雪嶺氏だからよいだろうけれども、あの方自身の悲しさは、何も立派な伯父があることによってのみいやされるものではない。