轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

と、金兵衛の眼に付いたのは「徳大寺公城」という署名であり、その下におされた血判であった。

「…………」

金兵衛の胸は動悸をうった。

「こりゃア例の巻き奉書だ!」ムズと金兵衛は巻き奉書を握った。「目付けた目付けた巻き奉書を目付けた!」――否、口に出していったのではない、口の中で歓喜して叫んだまでであった。で、ヌッと立ち上がって、潜りのほうへ走ろうとした。が、金兵衛はもう一品の、綴じ紙に心を引きつけられ、そろそろと立ち帰ったが、またも老人の前へかがんで、綴じ紙の頁をめくって見た。いくつかの図面を幾枚かの紙に、順序を追って描かれてあり、最後の頁に「竹内式部、可蔵者也」と記されてあった。

「…………」

もちろん金兵衛にはこの綴じ紙の、性質も価値もわかっていなかった。しかし、竹内式部という、この署名こそは金兵衛にとっては、何物よりも権威があった。

「竹内式部可蔵者也と、ハッキリと記されている以上は、式部先生の持ち品とみてよい。では『あのお方』へ捧ぐべきものだ」金兵衛は突嗟にこう思った。「巻き奉書と往来側に、一緒に置かれてあるからには、連絡のある物かもしれない。いずれは重大な品なのだろう」