轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

建ってまだ間もないとみえるが、その家は造りも瀟洒に凝っていたし、わざとつくろわぬさまをみせた野庭の風情も平凡ではなかった。二人は萩の茂った小径を、踏石づたいにいって、別棟になっている茶室風の離屋へ案内された。梅八は口にはなにも云わなかったが、家の好みのよさと、あたりのふぜいと、そしていかにもぴったりと心の通じあう客と、こうして人眼を忍ぶような離屋におちついたことが、やるせないほどもしみじみとした感じを誘い、ついに味わうことのなかった、青春の日がかえって来たかのような気持にさえなった。

「静かないい家でございますね」

「たべものもなかなか悪くない」

田舎家を思わせるような古雅な行燈をあいだにして坐ると、客は脇差をとって置き、衿をくつろげて大きく息をついた。濡れ縁に置いてある蚊遣りの煙が、薄と萩の茂っている庭のほうへと、絶えずゆるやかになびいていた。

まるで拵えたような、これらの条件が、梅八の心を女らしい感情にひきいれてしまった。そしてそれ以上に巧みな相手の誘いを、そうと気づくこともできず、今こそあらいざらい聞いて貰えるという気持で、梅八はいつか身の上ばなしを始めていた。