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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
再会
一
再会
一
秀之進が江戸へ戻ったのは六月七日のことだった。かれは皀莢小路の家へはゆかず、馬喰町の宿屋へ草鞋をぬぎ、そこから大助に手紙を持たせてやった。風呂を浴びて、夕食の箸を手にしたところへ大助は来た。
「やあ、お帰りなさい」かれは元気にはいって来るなり食膳の脇に坐ってばたばたと団扇をつかった、また暑さの戻ってきた日だった、「どうしてこんな宿へ泊ったんです、わたしの住居はすぐ向うなのに、皀莢小路と訊けばわかると書いてあげたでしょう、水戸からの手紙で四五日まえから部屋をあけて待っていたのに、わざわざ宿をとるなんて、それもこんなひどい宿屋を選ぶ必要があったんですか」
秀之進ははじめに、やあと云ったきりで、黙々と自分で給仕しながら箸をはこんでいた。旅の日焼けもせずに、顔色はやはり白く沈んでいたし、頬から顎にかけていくらか痩せがみえたけれど、ぜんたいにどこかしらひどく印象の違ったところが感じられる。大助はそれに気づいておやと思った。
「早水さん、あなた痩せましたね」
そう云いながらよく見直したが、印象の違ったのはそのためとは思えなかった。いってみれば以前よりはすべてがはっきりとしてきた感じである。