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にっき

日記

宮本 百合子

14 一九二八年(昭和三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,758 字 · 118 页

青空文庫

六月十一日

〔欄外に〕永原夫妻来。

六月十一日(月曜)

○エキスペリメンタルに傘を昨夜忘れた。とりに行ったら七時半に来いという。行く。あった。

○午後モストルグへYが見て置いたというヤーシチク〔箱〕を買いに行ったところが無し。Y、肩をふって歩いてクズネツキー・モスト〔古本屋の多い街路名〕の方でカゴ、アディアロ〔掛蒲団〕を見つけ、待たした из〔辻馬車「イズヴォーシック」〕でかえった。

○永原さんのところへ本箱行李一つあずける。ライスカレーを御馳走になる。

○夜十一時半、レーニングラードへ立つ。今度は三等の寝台だ。さっぱりして居て、二段で、天井の下の棚に荷を置く。皆木。車台は鉄。夜更け、すっかり灯をくらくするし、喋る者はないし、静かで眠れた。乗合、前に、いかにも細そりした方のロシア型娘がのって居た。着物の上から、カポート〔婦人用部屋着〕をかぶって、脚をちぢめて寝て居る。

レーニングラード近くなると、景色がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)辺と違って来た。

風景に水が多くなる。白夜で、明るい。光なく明るい。草が生えている。どこからとなくそれが沼になって草の間に水が見え、やがて川になる。