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にっき
日記
宮本 百合子
07 一九二一年(大正十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页
十一月十二日
十一月十三日
「ロンドン塔」は、今日自身にはペダンテックなロマンスすぎる。「行人」で自分と云う青年の心が、落付き、要領よくかつ冷やかな一面を備えて居るのが、自分に漱石と云う人格の一面を感じさせたのだ。小憎らしいところ確にあり。失礼な申し分ながら。
十一月十二日(土曜)晴
「南路」の仕度
近頃は五時になるともう障子をしめて、スタンドをつけた部屋を愛す心持になる。黄色になり、しぼみ、空にばら撒いたように見える桐の葉が夕風につれて落ちる音が心をせわしくする。
淋しい卵色に西の地平線が明るみ、灯かげのうつる家の家屋や細い松の梢が、くっきりと黒く、人の世を抱いたようにうき立って見える。
十一月十三日(日曜)
朝、「南路」の書き出しを少々。生理的関係から、脳が貧血して居ると見えて、忽ち頭がかたくなって疲れる。
少し風はあるが外を見るとよい天気だ。家に居るのがつまらなく思われ国男さんを呼ぼうとして失敗。
Aが、青山から帰って来ると直ぐ、コロンビアクラブに行くことになり、いそいで身なりを調え出かける。
吉田さん、ウェルス、外三内氏夫人等に会い愉快だった。
夜、食後どうかしてひどく貧血し、葡萄酒をわざわざ買って来ていただいた。