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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

十一月十四日

十一月十五日

十一月十四日(月曜)

床の上少し外気の寒さを感じる。

例によって昼まで執筆。

何だか輝やいた光線が来ず薄ら寒い。四時頃電気をつけ、火鉢に火を入れ、「道草」よんで居る処へ、Aおかえり。

「道草」をよみ、自分にはいよいよ夏目さんと云う人が、感ぜられるような心持がした。

元、自分は、単に彼の文才に引かれて居、又多くの人がそうなのではあるまいかと思う。彼の人格は、分った、動かない、ロシア小説に現れる所謂人間性には乏しいものであると思うのは間違いか。驚くべき日本人であると思う。「道草」の妻に対して、ああやって生活出来ることを認め得る心持!

十一月十五日(火曜)

あまり上天気の方にあらず。夕方が迫ってから柔かな間接の日光が差し、日にあたる顔が快く感ぜられた。

心が落着きまとまり、仕事に中心を置いて居ると、如何に、時には人間が小品を書くことが自然であるのを感じる。

時々書くものは面白い。沢山になったら「麻の実」として、まとめよう。短いものだから、まとめるには幾年かかかり、次第に時や心の変化も見えてよいだろう。

夕方散歩に出、切角のろのろと心持よく歩いて居たら、いやなローファーに会い心持を悪くしてしまった。