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にっき
日記
宮本 百合子
07 一九二一年(大正十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页
九月二十九日
始め西村さんが見つからない。漸々これと分ったが、髭がないため眼じるしを失ったと知る。
七年振りの帰京に、長野の親類二人と私ほか迎えがない。来てよかったと思う。午後万世橋ぎわの旅館に来、Aを呼び夕飯をたべ、帝劇にミニヨンを見る。ボックスが如何に見られる場所で、見る場所でないかを痛感する。
西村さんは相変らず西村さんだ。会って忽ち、他意ない悦びを感じた。あれ程、うちあけて、楽しく迎えられる人は彼と浜中氏と、岩本さん位のものではないだろうか。
長く立って居、歩き、非常に疲れた。
九月二十九日(木曜)
昨日一日の仕事で疲れて居たが、林町で二人に来いと国男さんをよこされるので、夕食後に行った。母が、「我に叛く」について段々不快、不満をAの方に持って行き、今後、私共二人に会いもせず、来ても呉れるなと云われるのだ。総ての衝突、不快は、彼女がAを理解し得ないこと、理解し得ないことをAが知り過て、其を越えられないことによって起って来る。自分の考えから云えば、彼女の態度は浅薄で人間の深い心の連続を見ないように思えた。が、苦しかった。会う会わないなどと云う事実は兎も角そう云う不自然な、堪ゆべからざることを堪え得るものとさせたような感情が、自分には悲しく辛く、彼女のために情けなく思えたのだ。