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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

十月八日

何にしろ歩く丈でも相当にあるのを困ったものに思う。もう一二日の辛棒。

○林町との間に、一つのはっきりした間隔が出来た。未だ日が浅いので、それ程の淋しさを感じないのみか、一方却ってさっぱりしたような心持さえする。つまり、もう行かなければ悪かろうとか、又今日あたり小林さんが迎に来るのではあるまいかと云う心配が、すっかりなくなり、一日がまとまって自分のものになる気持がするのである。

母はどう思っていられるだろう。Aのためにも、母上のためにも、気の毒なことに思う。彼等にとっては悪縁であったと云える。

母が、Aが世の中を都合よく行けるのは、偏に、父の紹介にのみよると思って居られる。愛すべき心持だ。それほど、彼女には自分の良人が万能に見え、有力に、成功者であると思えるのだ。それをとがめるような気分は、自分からは遠く去った。

十月八日(土曜)

今日は図書館行をやめ。昨日、音楽会へ行き、関さんのソローをきく。

まだまだ。それをはっきりあの人に云い、もっともっと努力、ほんとうに自分のものを見出すだけの努力をさせないのは気の毒だと思う。

まるでベツォールドの小さいひな型だ。