轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

狭っくるしい部屋の中で、むせるような生活をしなれて来た彼は、こんな広い家に這入ると、急にすべての人間が自分から遠のいてしまうような気がして、妙な肌寒さを感じた。お浜がそばについている間ですらそうであったのに、まして、彼女がこっそり姿を消してしまったあとの頼りなさといったらなかったのである。

むろん、お浜が去ったあとでは、お民をはじめ、みんなで彼を取りまいて、いろいろと言葉をかけてくれた。しかしそれらの言葉は、彼の耳には、学校の先生が教壇の上からものを言っているようにきこえて、何だか身がすくむようだった。とりわけお民の言葉にはそんな調子がひどかった。お民としてはそれはやむを得ないことだったかも知れない。というのは、彼女は、こんご次郎の悪癖を矯め、彼に上品な礼儀を教えこむという、母として重大な責務を負っていたのだから。

恭一は大して恐い兄とは思えなかった。しかし、その生白い顔と、いやにしとやかな動作とが、どうも次郎にしっくりしなかった。弟の俊三はまだ生まれて三年たらずではあったが、末っ子で、はじめから母の乳房で育ったためか、誰に対しても無遠慮な振舞いがあり、次郎の眼には、彼こそ第一の強敵のように映った。