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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
に沈めておくと、朝には大てい獲物がはいっている。次郎は、その季節になると、よく夕飯におくれたり、まだ暗いうちから起き上って、戸をがたぴしいわせたりして、みんなに叱言を食うのであった。大川が近いので、男衆はちょっとした際を見ては投網に行って、鱸などをとって来るのだったが、そんな場合、次郎が一緒でないことは、ごく稀であった。
大川の土堤を一里あまり下ると、もう海である。ちょうど、同じくらいの距離を上手に行くと、旧藩暗代の名高い土木家が植えたという杉並木がある。次郎は、そのどちらも好きであった。彼は、別に面白いことが見つからないと、仲間を誘っては、よくそのどちらかに出かけて行った。海では、干潟で貝を捕り、杉並木では木登りや、石投げをやった。
いつの間にか、彼は小船を漕ぐことを覚えた。また近所の農家で馬にも乗せてもらった。従兄弟たちと一緒に、この村の祭りに加わって、若衆組の下仂きもさせてもらった。本田の家では許されなかったようなことが、ここではほとんど自由であった。こうして、次から次へと新しい楽しみが殖えて来た。その間に、農家の生活がどんなものだかも、次第にわかって来て、ちょっとした手伝いぐらいは、彼にも出来るようになったのである。