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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

これに反して、日本の文壇にあった自然主義や、その他のレアリズムに属する文学は、本質的に「人の好い文学」であり、単に客観のために客観し、有る世界を有る現状で見ようとするので、何等主観上に於ける哲学がなく、したがって人生に対する挑戦がない。彼等は単にお人好しの小説家で、真実を見ぬこうとする意地悪さもなく、科学的なる残忍さも持っていない。彼等が描こうとする世界は、現実を現実として享楽し、趣味の訓練によって生きて行こうとするところの、茶道的、風流的なる東洋の生活で、本質に於て全く俳句と一致している。故に日本自然派小説の典型であり、その最も優秀なものと定評された徳田秋声の作の如き、全くその*写生文的俳句趣味で特色されている。そして他の多くの小説が、より劣等な価値に於て、悉く皆俳句である。

* 写生文というのは、ホトトギス派の俳人によって創始された文学で、有る世界を有る現状のままに於て、全然没主観で書くことを主張した。そこでこれが自然主義の文学論と、まったく一緒になってしまった。

さればレアリズム(現実主義)という言葉が、西洋風の文学観で言われる限り、日本には真のレアリズムがないのである。