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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
第七章 情緒と権力感情
自由主義と内容主義とは、芸術上の言語に於てイコールである。
第七章 情緒と権力感情
吾人が普通に「感情」と言ってるものは、気分色合を異にしているところの、二つの別趣のものを包括している。一つは所謂「情緒」であって、優雅に、涙もろく、女性的な愛情に充ちたものである。これに対して他の一つは、男性的な気概に充ち、どこかに勇気を感じさせ、或る高翔感的な興奮を伴うもので、普通に「意志的感情」もしくは「*権力感情」と呼ぶものである。
そこで人間のすべての詩は、所詮この二つの感情の中、何れかを発想するものに外ならない。古来歴史上に於けるすべての詩は、これによって情操の分類から、判然として二つの者に別れている。即ち前に他の章で言ったように、古代希臘の詩界に於ける、「叙事詩」と「抒情詩」との対立がこれである。叙事詩はホーマーのイリアッドが代表し、抒情詩はサッホオの恋愛詩が代表している。そして前者が、かの歴山大王やシーザアやの、古代の英雄によって愛誦され、彼等の少年時代に於て、早くそのヒロイックな権力感情を養成した時、後者はより民衆的な青年の間に読まれ、幾多のセンチメンタルな恋愛主義者を養成した。