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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

第九章 詩の本質

なぜなら「知る」ものはすべて知性であるのに、感情が理智の知らないものを知るというのは、眼なくして物を視る不思議であるから。しかしパスカルの言う意味は、そうした無智の感情を指すのでなくして、智慧の認識と共に融け合ってる感情――即ち主観的態度の観照――を指しているのである。

第九章 詩の本質

今や吾人は、始めて本書が標題する実の題目、詩とは何ぞや? の解説に這入ってきた。詩とは何だろうか。形式についてではなし、内容について言われる詩とは何だろうか? 吾人はこれに対する解答を、どこか前に他の章で暗示したようにも思われるし、また未だしなかったようにも考えられる。とにかく何れにせよ、この章に於て決定的な解答をしてしまおう。

そもそも詩とは何だろうか。広い意味に於て、自然や人生の到るところに観念されてる、一種不思議な「詩」という言葉は何だろうか。吾人はあえてそれを不思議と言う。なぜならこの言葉は、常に多くの人々によって使用され、到るところに思惟されているにかかわらず、一も判然とした定義がなく、どこか正体が不明であり、捉えどころのない靄の中で、曖昧漠然としているからである。