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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

5

換言すれば、吾人のあまりに日本人的なレアリズムやデモクラシイやを、断然として廃棄してしまうのだ。そして同じレアリズムやデモクラシイやを、西洋文明の軌道に於ける、相対上の観念に移して行くのだ。今、何よりも我々は詩人になり、生れたる貴族にならねばならない。先ず人間として、文明情操の根柢を作っておくのだ。そして後、この一つの線路の上に、あらゆる反対矛盾する近代思潮を走らせよう。自然主義も、民衆主義も、社会主義も、またこれに衝突する他方の思潮も、かくて始めて我々の内地を走り、日本が世界的の交通に出てくるだろう。今日の事態に於けるものは、すべて島国鎖国の迷夢であり、空の空たるでたらめの妄想にすぎないのだ。

5

新日本の世界的創造は、決してこれより他にあり得ない。もし人々がそれを意欲し、自覚に於て進むならば、すくなくとも吾人の文化と芸術とを、新しき方向に向けることができるだろう。そしてこの時、日本の文壇も世界と同じく、詩人を尊敬して見るようになるであろう。なぜならば詩の本質は主観であり、かつ元来貴族的のものである故に、西洋文明の精神が潮流するところでは、詩は必然に先導に立ち、文学の一切を越えて崇敬される。