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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

2

しかし前に述べた通り、芸術は抽象的なものでなくして具象的なものであるから、純粋の意味の芸術品は、かかる「主義」と称する如き概念上のイデヤを持たない。芸術家の持てるイデヤは、もっと漠然としており、概念上には殆ど反省されないところの、或る「感じられる意味」である。芸術家は――純粋の芸術家である限り――決してどんな主義者でもない。なぜなら芸術は、主義を有することによって、真の「表現」を失ってしまうからである。以下このことを説明するため、観念に於ける「抽象的のもの」と「具象的のもの」と、即ち観念としての抽象物と具象物とが、どこで如何に違ってるかを話してみよう。

2

具象的なるすべてのものは、種々雑多の複雑した要素から成立している。具象的(具体的)なる存在とは、実に多が一の中で融け合い、部分が全体の中において、有機的に滲透混和して統一されたものに外ならない。然るに理智の反省は、これを概念によって分析し、有機的な統一を無機的に換え、部分を箇々の戸棚に別け、見出しカードの抽斗を付けて索引に便利にする。そこで必要の場合に応じ、吾人はこれ等の索引から、一つの戸棚を見附けて抽き出すのである。