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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

であるべき筈だ。(「生活のための芸術・芸術のための芸術」参照。)然るに自然主義は、一方で科学的没主観のレアリズムを主張しながら、しかも一方に於て「生活のための芸術」を主張していた。こうした自覚上の矛盾が、上述の如き結果になって現われたのが、即ち所謂自然派の文学である。(この自然派の矛盾が、日本に於ていかに訂正されたかを後に述べる。)

要するに自然派の文学は、「主観を否定する主観主義の文学」であり、「道徳に反対する倫理主義の文学」であり、そして実に「逆説されたる詩的精神の文学」であった。もし「科学の如く」という意味が、非人間的没情熱や、冷静無私の没主観を意味するならば、自然派文学は正にその正反対のものであった。むしろ彼等の文学は、あまりに人間的情慾に充ちたところの、あまりに主観的なる「生活のための芸術」でありすぎた。彼等の中での、最も徹底した芸術至上主義者――したがって最も徹底した自然主義者――であったフローベルさえ、常に「余は平凡を最も憎む、故にあえて平凡を書く。」と言ったと言われる。以ていかに自然主義が本質的な逆説文学であったかが解るだろう。然り。