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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页
二七 ヴァイオリンの思い出
「僕はN先生の洋行中、しばらく一般物理の講義を持ったことがあったがね、助手に学生の出席時間をつけさせてみたら、やっぱりちゃんとプロバビリティ曲線になったから、早速講義の材料に使ったことがあったよ」
と話をされていた。
帰りには果して予定通り珈琲の御馳走になった。
二七 ヴァイオリンの思い出
この話も一部は、随筆にかかれているのであるが、御話の方がもっと先生の私的な感情がはいっていると思われるので書き止めることとする。いつか、今は発狂して行衛が分らぬという噂のO君と二人で、先生の応接間へ御訪ねした時のことであった。まだセロの勉強の始まる前で、先生はヴァイオリンに大分御熱心だった頃の話である。
僕のヴァイオリンも古いものだ。竜田山の頂上へ持ち上った時から、もう二十年あまりになるからなあ。あの時狸か何かが鳴いて逃げ帰ったというのは、あれは嘘だが、竜田山へ上ったことは本当だ。何でもあの時買ったヴァイオリンは九円だったが、月々十二円ずつ送って貰っていたのだから、その借金を返してしまうには、何でも随分かかったものだった。そのヴァイオリンを担いで東京へきて、一つ誰か先生について勉強しようと思って考えて見たが、なかなか見当らぬ。