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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页

青空文庫

「それは困った、僕はそういう意味でいったのではない」と何遍も繰り返しながら、もう一つ恐縮された話をされた。

僕はこんなに恐縮するような目に遭ったのはこれで二度目だ。もう大分前の話だが、Wさんと一緒にマグネットの長さをミクロンまで測っていたことがあったが、ある時Wさんがちょっと出張か何かでどこかへ出掛けたことがあったんだ。ところがその晩十二時頃になって、僕の家の門を叩く人があって、起きてみるとWさんが門の前に立っているんだ。そして「実は国府津まで行ったんだが、あの原器室の入口の鍵を忘れて持って行ってしまったので、急に返しにきたよ」といって鍵を出された。あの時ばかりは流石の僕も恐縮の極み冷汗が出たよ。あんなに弱ったことはなかったね。僕は今は御覧の通り出来るだけずぼらにやっているが、これでも若い時は薬瓶を提げて我慢しながら学校へ通ったものだった。僕も本当は几帳面なのが好きなんで、自分も身体の良かった中は出来るだけちゃんとやってきた心算だったが、とてもWさんには敵わないね。几帳面もあれ位になると雅味が出てくるよ。もっともあの時は心底から恐縮してしまって雅味どころの騒ぎではなかったがね。