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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页
昔の名器とこの頃の廉物のヴァイオリンとをそういう風にして較べて見たら、どこがちがうかなどということが一遍に分りやしないかな。もっともヴァイオリンの製造家の方では大分研究しているらしいが、まだまだ物理学者の手でやるべきことが沢山残されている。まあ未だほとんど手がついていないといっても良いだろうな。
糸の振動にしたって、本当のところはちっとも分っていないんだ。弓の当て方でずいぶん高周波が違うのだし、第一松脂の効能というものが、あれがまたなかなか面白いものなのだ。もっともあれはレーレーが大分やっているがね。そういえばパガニニなんか全部放弦で、左の手を全然使わずに、弓だけで曲を弾いて見せたというが、あれなんかも弓を適当に駒にかけて弾くと、理論上は勝手な音が出ても良いことにはなるのだが。もっとも実際はあんな鬼才でなくては、そんな芸当は出来ないんだ。あんな不具みたいな手でなくちゃ、あの曲はちょっと弾けないのかも知れないな。君、パガニニの指を知っていますか。
Sさんは勿論「存じませんな」という。先生はついと立って隣の書斎から部厚な洋書を持って来られて、無雑作に開いて差し出される。