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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页

青空文庫

私の家はそのような町からさえもずっと離れた片田舎だったので、縁続きになっているMの家に預けられて六年の小学教育を終えた。Mの祖父は引き続いて家令として、旧い御殿を守っていた関係上、その六年間の生活はほとんど御殿と終始していた。そして明治になって後の封建時代の生活の名残りと深い接触をもった機縁が今の追憶となっている。

御殿には、御老体の大殿様と、御前様と呼んでいたその奥方とが主として住んでおられた。私の最も印象に残るのはその御前様の生活であって、その頃六十を越しておられて、茶筅に結った細面の随分綺麗な方であった。大殿様が東京の御本邸へ行かれて留守の間などは、Mの祖母が話相手として毎晩のように私を連れて御殿へ上った。御前様の御居間は四十畳位の広い部屋で、その奥の十畳位が昔ながらに敷居で仕切られてある。その真中に大きい火燵をしつらえて、御前様はただ一人その火燵にあたっておられる。女中達や旧士族の御機嫌伺いに上った人々は、その真中の敷居より奥へはいることは許されない。人々の伺候する広い部分には、片隅に少さい炉が仕切ってあって、その周囲に座を占めながら敷居越しに御前様と四方山の話をする。