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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页
本名はと聞いたらそれが本名ですと魚屋は澄ましていた。魚もこれ位変っていると描くのもかえって楽なような気がした。どうせ滅多に見た人もないのだから色なんか少々どうでも、ただ毒々しく見えるようにという気があったのかも知れない。しかし描き上ったところを見ると、どうも嘘の魚のように見えて仕方がない。非常に変った物を、見たこともない人に、こんなものが実際いるのだと納得させるように描くのはやはり一層難かしいものらしいということが分ってちょっと面白かった。「魑魅を画くは易し」などと嘯いていた支那の昔の画家は、相手が素人だと思って勝手な熱を揚げていたのかも知れない。魑魅だって内界までも入れた広い意味での自然界には実在の動物なのである。まあそういうことに独り決めをしておいて、この絵は早々に失敬してしまった。
次にはまとうを描いてみた。これはかわはぎに似た形の魚で、味噌汁の実にするとなかなか美味いものである。この魚は光沢はそれほど難しくはなかったが、その代り色が厄介で妙に燻んで暗緑色をしていた。そしてその下に基調をなす紫色があって、その紫が所々に顔を出しているのに、ちょっと手を焼いた。