轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
「だがよくわたしが通るのをみつけたもんだな」
「だってもう来るじぶんだと思っていたからさ、それが三日待たされた、いい道草をくってしまったよ」
「御挨拶ですね」
「おれは相手に見知りはない、だがあんたは江戸屋敷の者と親しいから、ことによると知り合かも知れぬと思った、それで迷惑をたのんだのだが……しかし是れ是れだと云えば、必ずあんたの態度で向うに感づかれる、なにか連絡があるなと察せられぬものでもない、それでわざと名も云わなかったわけだ」
「つまり敵を計るに先ず味方を以てすというところか」
「それが当ったのは見るとおりだ、かれは裏を掻かれたと思った、どうやら府中藩士までつれだしたようすだが、おれは宿を出るとすぐさっきの路次ですっかり見ていた、あの男は泡をくって駆けていったっけ」
「追っていった騎馬は目付役の者たちだ」
「それはそれは」秀之進はそっと笑いだした、「暑いのにご苦労さまな、おれたちはおかげで涼しい旅ができる」
「あんまり涼しくもないぜ」
「いまにわかるよ」
小一里の道を南へくだると高浜の町へ出る、地理をよく調べておいたとみえ、そこから霞ヶ浦の船着き場へまっすぐにゆき、――玉造まで、といって舟を雇うと、二人は涼風のわたる湖上をいい気持にゆられていった。