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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

「そんな事をいわずに墓碑の篆額を書くツモリで書いてくれ」と重ねていうと、「墓碑なら書くよ、生きてる中は険呑だから書かんが、死んだら君の墓石へ書いてやろう、」といった。

「調戯じゃない。君と僕とドッチが先きへ死ぬか、年からいったって解るじゃないか。」

「そりゃア解ってるさ。君のようにむやみと薬を飲むカラダじゃないからね。年なんかアテにならん。僕がアトへ残るのは知れ切ってる。こりゃあマジメだよ、君が死ねばきっと墓石へ書いてやる。森に墓銘を書かせろと遺言状に書いて置いてもイイ、」と真顔になっていった。

一度冠を曲げたら容易に直す人でないのを知ってるからその咄はそれ切り打切とした。が、万一自分が鴎外に先んじたらこの一場の約束の実現を遺言するはずだったが、鴎外が死んでしまったのでその希望も空しくなった。これは数年前、故和田雲邨翁が新収稀覯書の展覧を兼ねて少数知人を招宴した時の食卓での対談であった。これが鴎外と款語した最後で、それから後は懸違って一度も会わなかったから、この一場の偶談は殊に感慨が深い。

私が鴎外と最も親しくしたのは小倉赴任前の古い時代であった。近時は鴎外(のみならず他の文壇の友人)とも疎縁となって、折々の会合で同席する位に過ぎなかったが、それでも憶出せば限りない追懐がある。