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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

鴎外は各国博物館の業績に深く潜思して、就任後一、二回落合った偶然の咄のついでにも抱負の一端を洩らしていた。もし長くその椅子に坐していたら必ず新生面を拓く種々の胸算があったろうと思う。正倉院の門戸を解放して民間篤志家の拝観を許されるようになったのもまた鴎外の尽力であった。この貴重な秘庫を民間奇特者に解放した一事だけでも鴎外のような学術的芸術的理解の深い官界の権勢者を失ったのは芸苑の恨事であった。

鴎外は早くから筆蹟が見事だった。晩年には益々老熟して蒼勁精厳を極めた。それにもかかわらず容易に揮毫の求めに応じなかった。殊に短冊へ書くのが大嫌いで、日夕親炙したものの求めにさえ短冊の揮毫は固く拒絶した。何でも短冊は僅か五、六枚ぐらいしか書かなかったろうという評判で、短冊蒐集家の中には鴎外の短冊を懸賞したものもあるが獲られなかった。

日露戦役後、度々部下の戦死者のため墓碑の篆額を書かせられたので篆書は堂に入った。本人も得意であって「篆書だけは稽古したから大分上手になった、」と自任していた。私は今人の筆蹟なぞに特別の興味を持ってるのではないが、数年前に知人の筆蹟を集めて屏風を作ろうと思立った時、偶然或る処で鴎外に会ったので一枚書いてくれというと、また冷かしの種にするんだろうと笑って応じてくれそうもなかった。