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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
ところが誰のよりも数倍高価である紅葉の色紙が誰のよりも一番早く売れてしまったそうだ。
紅葉は死ぬ前に盛んに短冊を書いて、「俺の字は死ぬと値が出るぞ」といって人に与えたそうだが、果して自信の通りであった。尤も紅葉は書が巧みであったし、人気が盛んであったから早くから筆蹟が珍重された。今から三十年も前、或る懇意な田舎の素封家に所望されて名士の手紙を十数通与えたところが、一年ほど経って偶然その家を訪問した或る男から、私に宛てた紅葉の手紙が錦襴表装の軸となって床の間に掛けてあったと知らせて来た。間もなくその素封家から「紅葉先生と露伴先生のだけは早速表装しました、お庇で自慢の家宝が二幅出来えました、」と、慇懃な礼手紙が来た。これほど熱心な崇拝家があろうとは思掛けなかったので、早速紅葉にその話をすると、その頃の紅葉はまだ若かったから嬉しそうな顔をして、「ありがたいネ、お礼に藤村の羊羹でも贈ろうか、」といって笑った。が、今では紅葉の手蹟を立派に表装して伝家のお宝物のように秘襲するものは決して少なくないだろう。
これも数年前の咄、日本橋の或る骨董屋に紅葉の手紙を表装した額面が出ていた。