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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
あるいは最後の床の上で、『ノートル・ダーム』の翻訳を推敲していたからであったかも知れないが、それならばなお更、死の淵に瀕してすらも決して苟且にしなかった製作的良心の盛んであったを知るべきである。
普通ならば医者から三月しか寿命のないのを申渡されて死後を覚悟すべき時である。聊かでも余財があれば家族のために残して置く乎、さらずば自分のための養生喰いをする乎、病気のために食慾の満足が得られないなら慰みになるものでも買うのが普通である。病気のためにも病床の慰みにも将た又死後の計の足しにもならないこういう高価の大辞典を瀕死の間際に買うというは世間に余り聞かない咄で、著述家としての尊い心持を最後の息を引取る瞬間までも忘れなかった紅葉の最後の逸事として後世に伝うるを値いしておる。
有体にいうと、私は紅葉の著作には世間が騒ぐほどに感服していなかった。その生活や態度や人物にも慊らなく思う事が多かった。私が文学のためというよりは実は紅葉のために常に苦言を反覆したのは畢竟紅葉の才の凡ならざるを惜んで玉成したかったためであるが、これがために紅葉から含まれて心にもなく仲違いするようになった。