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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
と笑った。
九月の上半は恐怖時代だった。流言蜚語は間断なく飛んで物情恟々、何をするにも落付かれないで仕事が手に付かなかった。大杉も引籠って落付いて仕事をしていられないと見えて、日に何度となく乳母車を押しては近所を運動していたから、表へ出るとは番毎に邂逅った。遠州縞の湯上りの尻絡げで、プロの生活には不似合いな金紋黒塗の乳母車を押して行く容子は抱えの車夫か門番が主人の赤ちゃんのお守をしているとしか見えなかった。地震の当座、私の家の裏木戸は大抵明け放しになっていたので、能く裏木戸からヒョッコリ児供を抱いてノッソリ入って来ては縁端へ腰を掛けて話し込んだ。
日は忘れたが或る晩、夜警の提灯を持って家の角に立ってると、買物帰りらしい野枝さんが通り掛って声を掛けた。左の手には大きな部厚の洋書を二冊抱え、右には新聞と小さな風呂敷包を下げていた。
「報知の夕刊を御覧なすって?」
「否エ。」その頃はマダ新聞が配達されなかった。
「鎌倉は大変ですワ。八幡さまが潰れて大仏さまが何寸とか前へ揺り出しましたって。御覧なさいまし、」と手に持つ新聞を見せた。
提灯の照明ではハッキリ解らなかったが、ちょっと覗いて直ぐ返すと、