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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

東片町に住った頃、近所に常磐津を上手に語る家があった。二葉亭は毎晩その刻限を覘っては垣根越しに聞きに行った。艶ッぽい節廻しの身に沁み入るようなのに聞惚れて、為永の中本に出て来そうな仇な中年増を想像しては能く噂をしていたが、或る時尋ねると、「時にアノ常磐津の本尊をとうとう突留めたところが、アンマリ見当外れでビックリした。仇な年増どころか皺だらけのイイ婆アさんサ。あの乾枯びたシャモの頸のような咽喉からドウしてアンナ艶ッぽい声が出るか、声ばかり聞いてると身体が融けるようだが、顔を見るとウンザリする、」といった。が、顔を見るとウンザリしてもその声に陶酔した気持は忘れられないと見えて、その後も時々垣根の外へ聞きに行ったらしかった。『平凡』の一節に「新内でも清元でも上手の歌うのを聞いてると、何だかこう国民の精粋というようなものが髣髴としてイキな声や微妙の節廻しの上に現れて、わが心の底に潜む何かに触れて何かが想い出されて何ともいえぬ懐かしい心持になる。私はこれを日本国民が二千年来この生を味うて得た所のものが間接の思想の形式に由らず直ちに人の肉声に乗って無形のままで人心に来り迫るのだ」